解離とは
大動脈の血管壁は、内膜・中膜・外膜の三層構造になっています。血液の流れる側が内膜、外側が外膜、内膜と外膜の間にあるのが中膜です。
内膜が裂けると、その裂け目から血液が中膜に流れ込み、中膜が膨らみます。この膨らみを「偽腔」)と言い、本来の血液の通り道を「真腔」と言います
真腔から偽腔への血液の入り口を「エントリー」、偽腔から真腔への血液の戻り口を「リエントリー)」と呼びます。真腔と偽腔を隔てる血管壁(内膜・中膜)を「フラップ」と呼びます。
分類
スタンフォード分類
予後や治療方針の決定に役立つ分類
A型:上行大動脈に解離があるもの
B型:上行大動脈に解離がないもの
ドベーキ分類
解離の進展範囲とエントリーの位置によるもの
Ⅰ型
エントリーが上行大動脈にあり、解離が下行大動脈や腹部大動脈にまで及ぶもの
Ⅱ型
エントリーやリエントリーが、上行大動脈や弓部大動脈に納まるもの
Ⅲa型
エントリーが下行大動脈にあり、解離が横隔膜内に及ぶもの
Ⅲb型
エントリーが下行大動脈にあり、解離が横隔膜より下にまで及ぶもの
偽腔の種類
【偽腔開存型】
エントリーから流入した血液がリエントリーから流出しているタイプで、偽腔の中に血流がある状態です。
【ULP型】
エントリーから偽腔に突出する血流(ULP)は確認できるけれども、流入した血液はリエントリーから流出せず、ほとんどが血栓となっているタイプです。
【偽腔血栓閉塞型】
偽腔が血栓で完全に塞がっていて、血流がないタイプです。
偽腔がもたらす血流障害
【大動脈拡張】
大動脈弁閉鎖不全症
大動脈の拡張に伴い広がって、心臓の拡張期にきちんと閉じなくなり、血液が心臓に逆流してしまう
嗄声/嚥下障害
反回神経が拡張したコブに圧迫されること生じる。
【大動脈破裂】
心タンポナーデ/血胸/出血性のショック
【偽腔による圧迫血流障害】
狭心症、心筋梗塞、脳虚血、腸管虚血、腎不全、上肢虚血、下肢虚血、脊髄の虚血(症状としては対麻痺)などが起こります。
Dynamic obstruction
大動脈レベルにおける真腔圧迫が原因で生じる
大きく開いた エントリーから多量の血流が偽腔に入り込む
Static obstruction
分枝レベルで真腔圧迫が生じる
分枝に及んだ解離の遠位端にリエントリーが形成されないために生じる
TEVAR
TEVARが絶大な効果を発揮するのはの dynamic obstructionである
ステントグラフトによるエントリー閉鎖によって瞬時に偽腔圧の低下と真腔 圧の上昇が生じ、真腔の圧迫が解除される。
エントリー閉鎖直後にstatic obstructionの生じた分枝の血流を確認し、必要があればただちに分枝内にベア・ステント留置を追加しなければならない。
大動脈径が50mm以上の症例、大動脈径の急速な増大を示す症例は、破裂の危険性が高いため、積極的にTEVARを行う。
Landing zone
正常な大動脈の大きさをしている部分とステントグラフト間の接合部分
大動脈のほとんどの部位にステントグラフトを内挿することが可能となって
きており左鎖骨下動脈についてはlandingzoneを延長する目的で同動脈をステントグラフトで閉塞することがある。
Zone0は第1枝(腕頭動脈)が閉塞する。
Zone1は第2枝(LCA:左総頚頭動脈)が閉塞する。
Zone2は第3枝(LSA:左鎖骨下動脈)が閉塞する。
Landing zoneから考える合併症
zone2Landingの場合
・左鎖骨下動脈をカバーする症例では、左上下肢や脳の虚血症状を伴う事はないが、脳梗塞や脊椎神経障害の合併症が多いことも指摘されています。
zone4Landingの場合
・アダムキュービッツ動脈や広範囲に肋間動脈をカバーする場合は、脊椎神経障害(対麻痺)の合併症が指摘されています。
・腹腔動脈閉鎖する場合、血流は上腸間膜動脈を経由した側副血行で灌流されるため腹部臓器・消化管血流に支障をきたす事は少ないが、脊椎神経障害の発生率が上昇すると言われています。
予防方法
デブランチTEVAR
zone2Landingの場合、必要時バイパスを追加します。
ex)左右腋窩動脈バイパス
予防のポイント4つ
①術中の低血圧の回避(80mmHgより高く維持する。)
②脳脊椎液ドレナージ(CSF)を施行する。
③塩酸ナロキソンを投与する。(48mg/48㏄を1時間2㏄で持続投与する。)
④貧血にならないよいうにする。
エンドリーク
Ⅰ
ステントグラフトと大動脈接合部からの漏れ
Ⅱ
大動脈側枝からの逆流に伴う漏れ
Ⅲ
ステントグラフトとステントグラフトの接合部や破損からの漏れ
Ⅳ
ステントグラフト自体からの漏れ(porosity leak)
Ⅴ
画像上漏れは明らかでないが徐々に動脈瘤が拡大。
Ⅰ・Ⅲは追加治療の対象となる。
合併症を伴わない急 性B型大動脈解離
βブロッカーを用いた厳格な降圧療法
最大径が 40mmを超える例は遠隔期の大動脈関連有害事象をきたす可能性が高いため積極的にTEVARを行うべきである
おすすめHP
nezukoblog.com
参考
newheart.jp
www.jstage.jst.go.jp
https://ibusuki.hosp.go.jp/wp-content/uploads/2021/10/20210914shoureikentou.pdf
https://www.yao.tokushukai.or.jp/img/section/cardiovascular/pdf/file4.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/2/99_275/_pdf
nezukoblog.com