髄液漏手術の予習
髄液漏の問題点
鼻をすするといった行為や、臥床により創部から不潔なものが侵入することがある。それらが頭蓋内に入ると、髄膜炎の発症だけでなく膿瘍形成や脳炎を起こすリスクがある。また漏れ続けると瘻孔が形成してしまう。髄液漏が増加すると低髄圧となり頭痛や苦痛が増加する。
診断
鼻漏中グルコース含有量が 30mg/ml 以上であった場合髄液漏を疑うが、偽陽性の可能性があることを念頭に置いておく必要がある。
治療
保存的
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抗生剤
頭蓋内感染予防のため髄液移行性の良い広域スペクトラム抗生剤(第3世代セフェム)を用いる。
自然閉鎖し髄液漏量が減ってきたときが,頭蓋内感染を起こしやすくなるため,熱型や炎症所見(白血球数,CRP,髄液検査)を参考にしながら厳重な経過観察が必要である。
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スパイナルドレナージ
漏れが続くと瘻孔を形成してしまうためスパイナルドレーンを挿入し、髄液漏の量をコントロールして創部の早期閉鎖を実施。髄液持続ドレナージ(lumber drain)による頭蓋内圧の低下は閉鎖に有効。70% 以上の 症例はベッド上安静,髄液持続ドレナージ(lumber drain)等の保存的治療に より閉鎖するといわれている。
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注意点
鼻かみは厳禁。
外科的
硬膜は再生しないため,外科的に修復しない限り単層の線維性結合組織あるいは鼻粘膜の再生で閉鎖するのみ
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多重閉鎖術(multi layer sealing)
脂肪、筋膜、軟骨、人工硬膜、鼻粘膜などを用い た多重閉鎖術(multi layer sealing:MLS)は有用である 。素材や閉鎖を何重にするかは漏孔の大きさによる。
遊離修復素材の採取部位候補
①脂肪:下腹部,大腿部
②筋膜:大腿四頭筋膜,側頭筋膜
③軟骨:鼻中隔軟骨,耳介軟骨
④粘膜:鼻甲介粘膜,鼻中隔粘膜
⑤人工硬膜
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局所有茎粘膜弁による閉鎖術
やや侵襲が大きいが、頭蓋底手術後の欠損が大きい場合に有効である。
参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/53/5/53_5_300/_pdf