From おぺかん

手術室看護師が手術に関係あったりなかったする勉強や日々の備忘録を発信

敗血症とソル・コーテフ

生体内に存在する生理的ステロイドであるコルチゾールは「ストレスホルモン」といわれるように、生体に侵襲が加わった際に分泌され,生体の恒常性維持に重要な役割を担う。

通常の血清コルチゾール濃度は5〜24mcg/dl

コルチゾールはストレスホルモンとも言われるように、身体ストレスや低血圧、重症感染などにより

血清コルチゾール濃度は40-50mcg/dlと高くなる。

何らかの原因により最適値以下のコルチゾール産生となれば、「機能的」または「相対的な」副腎機能不全がおきる。

敗血症性ショックではコルチゾールの分泌不全に加えて、糖質コルチコイド受容体の減少や組織反応性の低下により、糖質コルチコイド活性が低下する。

アジソン病や急性副腎不全のようなコルチゾール分泌不全ではショックに陥ることか
ら,ステロイドはショックの補助治療として用いられてきた。

 

 

ショック時のソル・コーテフ適応

初期輸液蘇生に不応性で高用量のカテコラミンを投与しても、ショック状態(収縮期血圧 90 mmHg 以下)が 1 時間以上続くような成人の敗血症性ショック患者

 

ショックを伴わない重症敗血症患者に対してステロイドを投与しても,ショック発生率や死亡率を減少させなかったとの RCT(HYPRESS RCT)を 2016 年に報告がある。

 

ステロイドを投与することによる想定される利益

  • α・βアドレナリン受容体の感受性増加・数の増加・機能回復

  • NFkBの活性化抑制

  • 抗炎症サイトカインの増加

  • 炎症サイトカインの減少

  • アラキドン酸の阻害

  • 血小板活性化因子の阻害

  • 好中球の凝集を防ぐ

 

注意

 ショック状態の患者には、ショックが改善すれば、直ちに投与を中止する。

 

参考

https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055579.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/24/Supplement2/24_24S0011/_pdf

www.kameda.com

人工呼吸器

人工呼吸器

 

言葉整理

1回換気量

 TV

 6-8ml/kg or 身長から予測体重 で計算する。

 予測体重計算

    男性:50 + 0.91× (身長cm-152.4)

    女性:45.5 + 0.91× (身長cm-152.4)

分時換気量

 MV 

 MV=TV×RR(換気回数12-18回)

I/E

 呼気/吸気

 

人工呼吸の目的

  • PaCO2

  • PaO2

この2つを正常に保つように設定している。

 

PaCO2決定因子

MV

つまり・・・TVとRR

PaCO2 40mmHgになるようにEtCO2をみて決定する。

 

PaO2の決定因子

FiO2とPEEP

 

FiO2

拡散できるように濃厚をUP

 

PEEP

肺胞の虚脱の防止(酸素血流不均衡の改善)

 

PaO2 80mmHg(=Spo2 95%以上)を目標にコントロール

 

呼吸器設定(基本)

 



 

呼吸器のメーカーによって名称がことなる

 

参考

https://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_10.pdf

 

特殊な設定

INTELLiVENT-ASV

INTELLiVENT-ASVETCO2とSpO2を設定し、設定したETCO2とSpO2


になるよう分時換気量、FIO2、PEEPは自動で調節されます。

 

設定したETCO2より患者のETCO2が上昇すれば分時換気量(MV)が増加するよう1回換気量と換気回数が増加します。

酸素化は設定したSpO2より患者のSpO2が低下すればFIO2とPEEPが増加します。

NTELLiVENT-ASVが活躍する場面は「早期離脱(ウイニング)」

離脱に向けて鎮静・鎮痛薬を減量する場面では、減量するたびに呼吸器の設定を調整しなければなりません。

この時INTELLiVENT-ASVでは強制換気から自発換気まで自動調節されるため、時間のロスが生じにくいです。

ASVが不慣れであって、設定やトラブル対応に難渋するようでは本末転倒

 

参考

ce7meliteracy.com

PMX CDHF

敗血症性ショック(穿孔)の手術を経験して

消化器外科領域における敗血症は急速に全身症状が進行・増悪し,敗血症性ショックから高率にMODS(敗血症性多臓器不全)に移行する重篤な病態である。

 

PMX

エンドトキシン吸着療法

 

エンドトキシンとは?

グラム陰性菌に由来する毒素であるエンドトキシンは、強力な炎症、臓器障害を引き起こし、敗血症の主要な原因物質の一つ。

 

PMXへの期待すること

SIRS(全身性炎症反応症候群)で昇圧剤で昇圧を認めず、エンドトキシン血症が強く疑われる患者に対してエンドトキシンを早期に除去する除去し循環動態の改善をを期待する

 

CDHFの併用

CDHFの併用の有用性が指摘されていて、PMXだけでは除去できない炎症性サイトカインを中心とするhumoral mediatorを除去することでMODSの予防になる。

敗血症性ショックでは腎機能低下を認めることが多いことから、体液管理という観点か
らもCHDFの併用は有効であると考える。

 

CDHFの適応

  • 利尿に反応しない心不全、腎不全
  • 急激な高K血症
  • 代謝性アシドーシス(Lastate15以上)
  • 尿毒症(BUN 100以上)

CDHFで除去できるもの

分子量の小さな物質。

 

参考

https://hospital.city.sendai.jp/pdf/p027-032%2021.pdf

http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse2230.pdf

youtu.be

youtu.be

 

 

腱板断裂手術

腱板の勉強

 

肩の解剖

肩峰 

上腕骨を包み込む。三角筋がついている。

烏口突起

上腕二頭筋腱短頭や上腕筋が付く。この骨が骨折すると肩の位置が保たれず不安定になる。

肩甲棘

僧帽筋や三尺筋が付く。

肩の関節は体表近くの筋肉の奥からも肩甲骨からでた筋肉が上腕骨に付く。筋肉は上腕骨に腱として上腕骨に付着する。

肩甲下筋腱、棘上筋腱、棘下筋腱、小円筋腱という4つの腱が上腕骨に付着します。肩甲下筋腱、棘上筋腱、棘下筋腱、小円筋腱を合わせて腱板といいます。

 

棘上筋 supra spinatus muscleスープラ スピナタス マッスル SSP

棘下筋 infra spinatus muscle インフラ スピナタス マッスル ISP

小円筋 teres minor muscle テレス マイナー マッスル TM

肩甲下筋 Subscapularis minor muscle サブ スキャプラリス  マイナー マッスル SSC

なぜ板と呼ばれるのでしょうか。

4つの腱は密接に組み合わさり板状になっている。4つの腱の総称を腱板という。

肩の病気で比較的みられる腱板断裂というものがある。

 

上腕二頭筋

一方は肩関節の中、もう一方は烏口突起に付く。

 

 

腱板断裂

三角筋や大胸筋という、アウターマッスルがある。そのため、腱板断裂を起こしてもアウターマッスルの働きで、腕を上げることができる。

断裂した腱板が周囲の骨にひっかかりを起こしたり、こすれを起こしたりすることで痛みが発生。目の前くらいの高さに腕を伸ばす時に痛むため、着替えや洗濯物を干す、駐車券のために腕を伸ばすなどの動きがつらくなる。

腱板断裂を発症してから長期間が経つと、インナーマッスルがやせて、脂肪に置き換わる。MRIで筋肉の様子を観察することで、慢性と急性の区別をすることが可能。

 

腱板は腕の付け根を覆うようについている。腱板の一部がはがれても、別の場所がついていればある程度の機能は維持される。腱板がはがれた直後は痛みが生じるが、その痛みも保存療法により軽快するケースがある。特にそれほど肩を多く使わない生活を送っている方の場合は、症状が悪化せずに経過することも少なくない。

 

腱板断裂手術

腱板を骨につなぐには、以前は骨に穴をあけて糸で固定する方法が主流だったが、現在ではスーチャーアンカーを使用する方法が広まっている。骨に固定されたスーチャーアンカーには糸が通されており、その糸を使用して腱板を骨に圧着する。

参考動画

https://www.youtube.com/watch?v=eQ4dx0EY6X8

https://dps.jjkkpro.jp/movie-detail-page/22326

 

肩甲下筋断裂の進行に伴い,上腕二頭筋長頭腱 (long head of biceps:LHB)病変が進行するとの 報告や LHB が関節鏡下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:ARCR)後の疼痛の主因とな るなどの報告が散見され、肩甲下筋(subscapularis: SSC)修復を含む ARCR において LHB の腱固定・ 切離術が積極的に行われるようになってきている.し かしながら LHB は肩関節において上腕骨頭の depressor 機能を持ち,肩甲上腕関節の安定性に関与す ると報告もある

 

参考

https://kasumigaura.hosp.go.jp/section/seikei_kenbandanretsu.html

 

術後

腱板断裂の術後早期には、修復した部分を保護するための外転装具を使用する。手術部位に負担がかからない動作訓練や筋力維持を行い、徐々に可動域を広げるためのリハビリを強化していく。病状や経過によりますが、通常4-6ヶ月程度のリハビリが必要。



 

輸血

輸血の勉強

体重60kgの場合(1/13の約4500ml)

 

 

輸血はいつ開始するか

出血前の血液が正常であれば循環血液量の

20%減(900ml)まで細胞外液やHES で補正可能。

20〜50%減(900〜2250ml)では赤血球輸血を開始しHb10g/ml前後になるようにする。

※ALB 濃度が2.0g/dl以上になるようにアルブミン製剤の投与も行う。

 

新鮮凍結血漿と濃厚血小板液の準備

凝固因子の補充の為用いる。

大体の開始目安は・・・

総循環血液量の90~100%の出血が見られた場合

 

血液凝固検査データと臨床所見により必要性を総合的に判断を行う。

臨床所見は・・・出血傾向あり

 

凝固因子活性を20~30%以上、上昇させるよう8~12ml/Kgの投与が必要。

60kgの場合は

480〜720ml=4〜6単位必要

 

プロトロンビンの減少はアルブミンよりも早期に起こるので、急性肝炎時の重症度の判定にも使われる。

 

JATEC 外傷初期診療ガイドラインでは、循環血液量の1~2倍の輸血を行った場合や臨床的出血傾向や凝固線溶系検査の以上を認めた場合
→凝固障害が進行する前に速やかに輸血すべきである。
→とりあえず、フィブリノゲンを投与しつつ同型のFFPが解凍するのを待つ。

 

フィブリノゲンは血小板が凝集・粘着するためにも必要。

 

参考

https://saitama-qq.jp/wp-content/uploads/2022/09/02senryakukaigi.pdf

 

MTP

massive transfusion protocols

外傷による大量出血や産科危機的出血においては早期からFFPを投与を行う。

RBCFFP:PC を1:1:1とするように輸血を行うMTPが近年主流になってきている。

鎖肛

仙骨会陰式肛門形成の予習

 

鎖肛とは

肛門がうまくつくられなかった病気でお尻に肛門が空いていないものや瘻孔となっている。

消化管先天異常で最も多い。

直腸や膀胱、尿管、子宮、膣と繋がり瘻孔を形成している場合がある。

 

病型

病型によって治療方針が決まる

直腸末端の位置による分類

  1. 低位型
  2. 中間位型
  3. 高位型

www.hosp.hyo-med.ac.jp

 

期待できる効果・代替治療

手術以外に肛門形成を行う方法はなし。自力排便できず腹部膨満や嘔吐、腸炎が持続し死に至ることもある。

手術を行えばストマ閉鎖術を施工した後自力で排便が行える。

 

術前

病型診断と電気刺激装置を用いて肛門周囲の筋肉の分布を確認し本来の肛門窩を確認。

 

治療方法(中間型・高位型)

人工肛門造設

低位型と比較して肛門括約筋が未熟のためまずは新生児期にストマ造設し排便できるようにする。

ストマは肛門形成後1−2ヶ月に閉鎖する。形成したばかりの肛門を汚染させない為。

 

肛門形成(仙骨会陰意識肛門形成)

・膀胱鏡 内視鏡

膀胱瘻、尿管瘻の観察や否定を行うため実施。

腸管盲端観察の為ストマ肛門側から内視鏡を腸管内に挿入し観察しながら処理。

 

・体位固定 マーキング

尿カテ留置

直腸剥離時のランドルトマークになる。

ジャックナイフ位にする

ストマがあるので圧迫に留意する。

マーキング

電気刺激により外肛門括約筋の収縮を皮膚より確認。

 

・直腸へ到達し盲端切離

仙骨後面から肛門形成予定部3㌢辺りまで切開。

直腸後面に達する。

直腸を全周に剥離を行いテープをかける。(ストマ肛門側に挿入したEDチューブや尿カテを参考に腸管を同定する)

 

・瘻孔の切断

瘻孔を貫通結紮し切断する。

無瘻孔型では直腸が細くなったところで切除する(同様に貫通結紮)

直腸盲端が肛門部まで十分に引き下ろせるか確認。

腸管に0,3,6,9時方向に把持糸掛ける(4-0PDS)

 

・貫通経路の作成 肛門形成

肛門窩を切開。

直腸恥骨筋に刺激装置を当てて収縮をみられたところに直角鉗子(食道鉗子など)をすすめペンローズ8号を入れる。

ペンローズ内をHegar拡張でブジーを行い(7〜14号)貫通経路の皮下を拡張する。

肛門窩からペンローズ越しに把持糸を鉗子で掴み腸管を下ろす。

肛門と腸管を吻合。(4-0Vicryl)

ステントチューブを経肛門的に留置(8Frネラトンにバラマイ軟膏)(創部の安静の為)

 

術後

吻合部狭窄

腸管肛門の吻合部が狭くなるためブジーを行っていく。

肛門粘膜脱

括約筋の発達が良くないと粘膜が脱出する。

人工肛門閉鎖

肛門形成1−2ヶ月後問題がなければ閉鎖手術を行う。これで初めて排便が行える。

浣腸

まとまった便が出るように行う。

排便管理

高位鎖肛ほど先天的に括約筋が弱いため排便訓練が必要。

 

確認

体温管理方法

膀胱鏡挿入時の体位固定

尿カテサイズ

内視鏡器械

刺激装置器械

ジャックナイフ体位固定

 

参考

item.rakuten.co.jp

血液ガス

血液ガス分析の勉強

 

考え方

  • Paco2(40)呼吸性で反応が早い
  • pH   (7.4) 代謝性で反応が遅い
  • HCO3- (2.4)

プラスで

  • BE(-2~+2) 代謝性アシドーシスで大体➖(マイナス)になる。

 

Paco2とPaO2を見れば呼吸の状態が分かり

pHとHCO3-合わせてみれば酸塩基平衡が分かる。

 

Paco2が高い(呼吸性アシドーシス)

 呼吸の調節が行えていない

   ex)麻薬の影響で中枢が抑制されている為。

 呼吸筋の動きが悪い  

   ex)筋弛緩が残存している為。

 ガス交換が行えていない  

   ex)拡散障害、酸素血流不均衡、シャント・・・

ガス交換が行えていない時の指標・・・150-PaCO2÷0.8-PaO2 が 10以下

 

HCO3-が低い(代謝性アシドーシス)

  1. 乳酸高値(18mg/dL以下)                  ex)ショック
  2. H+排泄障害             ex)腎不全
  3. HCO3-の喪失          ex)胃液以外の体液の喪失 腸液など・・・

代謝性アシドーシスといえば・・・ショック シンフゼン ジンフゼン

 

アニオンギャップ

代謝性アシドーシスときたらAGを計算。

どれくらい体に毒(乳酸etc)がたまっているか分かる。

Na-(Cl+HCO3-)

12を超えているとAG高値

 

血液ガス分析のやり方

  1. pHはどちらに傾いているか
  2. 呼吸性か代謝性か
  3. AGを計算
  4. 代償されているか
  5. 原因検索

をみながら下の表に照らし合わせる。

 

 

症例1

80歳男性。肺炎で息苦しい。COPD

pH 7.3    PaO2   62     PaCO2  69    HCO3  34   BE  5.8

酸素2lへ。

pH 7.2    PaO2   80     PaCO2  83    HCO3  33   BE  4

酸素を投与したことで慢性呼吸性アシドーシスから急性呼吸性アシドーシスへ!

COPDの人に酸素投与したことにより呼吸抑制が生じCO2ナルコーシスに。

※  HCO3でまだ代償されていないので発症して数時間のものではないのか!?

酸素投与量を減らした方がよいのでは。。。。

COPD(HCO3-が高い)ひとへの酸素を投与は注意。

 

 

症例2

45歳 CKD  Cr6.6

pH 7.3    PaO2   80     PaCO2  38    HCO3  19   BE  -6.0

Na-(Cl+HCO3)=137-(102+19)=16

代謝性アシドーシス

AGを計算すると12超えているため透析へ

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